ワイ、ベトナムの野良猫氏より寄稿を頂く〜貧困とは〜


ワイやで。

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ベトナムの野良猫Mr.Miu氏から貧困問題について寄稿がきたで。

大作や、じっくり読んでいただけると嬉しい。

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◾️野良猫、貧困について考える

どうもNews Picksの皆様、ベトナム在住のMr.Miuです。

先に断っておきますが、アカウント名がMr.Miuなのでそう名乗らせて頂いております。由来は私が飼っている猫がMiuというオス猫の為、Mr.Miuで御座います。

さて、今回Kaikei氏のブログに寄稿をさせていただくのはいろいろと議論になっている貧困関連の話題です。

主に議論の整理を目指しております。

私個人の考えとして貧困問題は途上国や先進国の分類が関係ないと考えています。

経済の状況により絶対的貧困⇒相対的貧困と変化をしていくのではないか。つまりアフリカ大陸が先進国となり、富の分配が日本になされなければ日本人も1日1ドルで生活することになりうるよね、という事です。

◾️貧困とは何か

国際協力機構(JICA)が公開している「DAC 貧困削減ガイドライン 要 約 (仮訳) 2003 年8月 国際協力事業団 企画・評価部」から定義などの説明です。

報告書〜日本国外務省作成 報告書リンク〜「資料名不明」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/hinkon/pdfs/jk05_01_02.pdf

国際協力機構「DAC 貧困削減ガイドライン要 約(仮訳)2003 年8月 国際協力事業団 企画・評価部」

http://www.jica.go.jp/activities/issues/poverty/pdf/index_01.pdf

OECD(経済協力開発機構)ではアマルティア・セン(アジア人で初めてノーベル経済学賞を受賞したインド人学者)の潜在能力アプローチに基づき、下記の定義をしています。

“貧困とは、経済的能力、人間的能力、政治的能力、社会的能力、保護能力の5つの能力が欠如している状態”

OECD開発援助委員会(DAC)ではより踏み込んだ定義です。

“貧困は、様々な側面にわたる剥奪状態を意味し、具体的には経済、社会、その他の豊かさ(Well-being)の基準を達成するための基本的な能力が欠如した状態を指し、絶対的貧困相対的貧困に分けられる。”

経済的能力、人間的能力、政治的能力、社会的能力、保護能力についてDACは報告書の中で下記のように定義をしています。

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これらは独立した要素ではなく相関関係が非常に強く、「ジェンダー」「環境」が横断的に関係しているものであるとしています。

それを図で表したものが以下です。

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◾️ジェンダー不平等

貧困問題の全ての側面でジェンダー の不平等が存在する。ある文化では女性に対する強い偏見や差別が存在し、貧困問題は男性と女性に異なった影響を与えるため、女性の貧困問題は男性のそれとは別な意味を持つ。

女性は貧困世帯において、生計や基本的な人的能力において重要な役割を果たしているにも拘わらず、社会的・経済的にも阻害されている。

女性の生産性を阻むことは世帯の収入や経済成長をさらに悪化させる原因になるため、 ジェンダーの不平等は貧困にとって大きな問題である。

◾️環境

環境と貧困は様々な形で関連している。農村、都市における環境悪化は貧しい人々に最も影響を与えている。貧困削減では、生態系と生活維持機能の共存を主眼に置いている。

農村では、土壌悪化、森林伐採、海産物の枯渇、水質汚染などが深刻である。都市部では、過密で非衛生な居住環境(スラム地域)が、地滑りや火災などの被害を受けやすい。

農村、都市部とも、干ばつ、洪水、台風・ハリケーンなど 破壊的な自然災害に脆弱であり、また島嶼国においては地球温暖化や温室ガス効果により海抜の上昇で土地が海面下に沈 み、居住する土地が失われるなど、深刻な問題を生み出している。

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報告書ではこの後、これらの要素が剥奪された人や社会に対してどのような施策が必要で、どのように評価するのか、またどのような国際的な取り組みが行われているのかが書かれています。

それだけで本が書けてしまうので日本国内の話題に戻ります。

NP内で常に議論になるのは相対的貧困率と絶対的貧困率です。

日本の一人親家庭の相対的貧困率が非常に高いので問題だ、解決せよ!という話題です。

「BLOGOS ネット上の論争で注目。日本の貧困率16.1%、一人親世帯だと54.6%に」

http://blogos.com/article/141441/

この記事内ではツイッターで乙武さんと橋下元大阪市長が議論をした事がきっかけでした。

記事内で引用されている「厚生労働省国民生活基礎調査 2013年」を見てみましょう。

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引用元:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf

OECDの定義に基づけば相対的貧困率とは、“等価可処分所得(世帯の可処分所得(収入から税金・社会 保険料等を除いたいわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整 した所得)の中央値の半分の額をいいます。”

定義引用元:「国民生活基礎調査(貧困率)厚労省HP」

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21a-01.pdf

ここでNPのコメント欄でも混乱していたと思われる点が出てきます。

それは可処分所得を世帯人数の平方根で割るという計算方法です。

上記の定義を引用した厚労省の資料に分かり易い喩えがありました。

“年収800万円の4人世帯と、年収200万円の1人世帯では、どちらも1人当たりの年収は200万円となりますが、両者の生活水準が同じ程度とは言えません。光熱水道費等の世帯人員共通コストは、世帯人員数が多くなるにつれて割安になる傾向があるためです”

つまり、変数である生活水準差はこの計算方法によって担保されています。

この計算方法を基に昭和60年度(1985年)から平成24年度(2013年)までの相対的貧困率をチャート化したのが以下の図となります。

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貧困線(相対的貧困とされる線)は2013年において122万円となり、相対的貧困率が16%であるとされています。

これは全日本国民のうち16%が122万円以下の生活をしているという指標となります。

ここからはこの相対的貧困率について考えていきます。

これも「厚生労働省国民生活基礎調査 2013年」からの引用です。

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この図は世帯別の所得の内訳となり併せて下図も参照します。引用元は同様です。

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図13の平均所得金額537万2千円を下回る世帯のうち「高齢者世帯」が90.1%、「児童のいる世帯」が41.5%、「母子世帯」が95.9%となっています。

また表9ではそれら世帯の所得の内訳が記載されています。

平均所得でみれば「高齢者世帯」が309.1万円、「児童のいる世帯」が673.2万円、「母子世帯」が243.4万円となっています。

これらの表と相対的貧困率(貧困線)の122万円を合わせ見れば、「高齢者世帯」「児童のいる世帯」「母子世帯」すべてが相対的貧困にある訳ではないことがわかります。

つまり、相対的貧困率の高い特有要因を持つ世帯が「高齢者世帯」「児童のいる世帯」「母子世帯」の中にあるという事です。

その為、“高齢者の貧困”、“母子家庭の貧困”などのキーワードはその世帯すべてが貧困であるかの印象を与えかねないため、相応しくないと思われます。

個人的には表9の「年金以外の社会保障の給付金」の割合が「児童のいる世帯」<「母子世帯」で多いので、ここを掘り下げていく必要があると感じています。

これらの報告書を調べている際に見つけた下記の報告書が非常に纏まっているように思います。

「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」

(平成27年(2015年)12月18日 内閣府 総務省 厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/soshiki/toukei/dl/tp151218-01_1.pdf

“⑥有識者の見方(参考6)

○相対的貧困率に関する調査分析に加え、両調査の相対的貧困率に差が生じうる要因や調査 の利用方法等について、有識者からヒアリングを行った。

<有識者 (五十音順、敬称略)>

宇南山卓(一橋大学准教授)、大竹文雄(大阪大学教授)、小塩隆士(一橋大学教授)、 西郷浩(早稲田大学教授)、白波瀬佐和子(東京大学教授)

(3)まとめ ①調査分析結果から明らかとなった点

○過去 10 年における相対的貧困率の上昇要因(両調査で共通して確認できた事項)

・相対的貧困率が相対的に高い 65 歳以上の世帯や単身世帯(主に単身高齢者世帯)、大人 1人と子どもの世帯のシェアが増加

・2人以上の大人のみの世帯についても、相対的貧困率の押し上げに寄与(65 歳以上の シェアの増加が影響している可能性)

○相対的貧困世帯の特徴(両調査で共通して確認できた事項)

・全世帯と比較して貧困世帯に多く分布しているのは、①高齢者世帯、②一人親世帯、③ 単身世帯、などの属性

この報告書のまとめにある

“相対的貧困率が相対的に高い 65 歳以上の世帯や単身世帯(主に単身高齢者世帯)、大人1人と子どもの世帯のシェアが増加”

“2人以上の大人のみの世帯についても、相対的貧困率の押し上げに寄与(65 歳以上の シェアの増加が影響している可能性)”

等を見ると少子高齢化により、高齢者が増えている事も一因としてある可能性に言及されたり、離婚率の増加によりひとり親が増えている事も要因としてあるのだろうと感じました。

日本の離婚率(平成25年度 2013年)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei14/dl/gaiyou.pdf

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1000人辺り、1.77人の方が離婚をしています。

昭和60年から見ても増加傾向にあるのは見て取れるかと思います。

◾️まとめ

かなり長く書いて参りましたが、本稿を通しての結論は下記となります。

  • 貧困とは5つの要素に相関関係があり、横断的に関与している要素も存在する。
  • 相対的貧困率とは5要素の1つの指標であり、なおかつ増加の理由も判明がしていない。

よって相対的貧困率に基づいて日本の貧困化を議論するのは脆弱な根拠を基とするので、より深い究明をしなければならない。

建設的な議論といえるのは国際的な貧困解決に向けた施策であり、これらを国内向け施策に発展させ、定着を進めていく必要がある。

以上、ベトナムから野良猫でした。

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◾️ワイまとめ

ミクロの話は盛り上がりやすいがマクロの視点もないとね。

おそらくマクロ情強からすれば突っ込みどころがあるだろう。

その議論をお待ちしています。

せっかくベトナムの野良猫氏が寄稿してくれたのだから、

「こんなん意味ない」「長いわ」とか感情的な批判は勘弁してね。

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