内部留保、誤解の基に2つの性質 「1年間の稼ぎ」と「蓄積した利益」


内部留保課税の論争が加熱しながら迷走

内部留保に対する課税の論争が加熱している。

政治家やメディアが提起する議論が収束せず、SNSなどであらぬ方向に飛んでいく。

論争が迷走する最大の原因には内部留保が持つ2つの性質がありそうだ。

内部留保には「単年度の利益(PL、1年間の稼ぎ)」と「創業時から蓄積した利益(BS、創業からの蓄積)」の側面がある。

PLの内部留保に対しては政府、BS内部留保に対しては株主が重要になることを本記事で説明していく。

目次

2つの意味
内部留保課税問題
PLでの税金
PL課税での亜種
BSでの税金
内部留保の所有者

内部留保にはPLとBSで2つの意味

内部留保とは一般に、企業が稼いだ利益である「利益剰余金」を指す。

これは1年間の稼ぎを表す損益計算書(PL)では税引後の利益と同じになる。

一方、創業期から過去に稼いだ利益の累積は貸借対照表(BS)で利益剰余金となり、これも内部留保と呼ばれる。

例えば、トヨタの2017年3月期のPLでの内部留保は1兆8311億円、2017年3月期末のBSでの内部留保は17兆6010億円とも表現できる。

グラフでイメージしてみよう。

<2つの性質を持つ内部留保のイメージ>

これは創業1年目の利益が100万円、2年目が200万円、3年目が150万円、4年目が300万円、5年目が250万円の企業の利益の推移だ。

創業5年目を表現した場合、1年間での利益(=内部留保)は250万円であり、5年目が終わった時点での内部留保は1000万円とも言える。

この時点で、PLでの内部留保とBSでの内部留保に関して議論を分ける必要を感じ取って頂けるだろうか。

内部留保課税問題

小池百合子都知事が率いる希望の党が公約の一つに内部留保課税を掲げたことで議論が盛り上がっている。

ここで、内部留保課税をPLに対して課すのか、BSに対して課すのかで議論は大きく別れる。

端的に言って、PLに対しての内部留保課税であれば税率の引き上げや課税対象の変更であって特段に珍しい議論ではない。

BSに対しての内部留保課税であれば、財務省や国税庁だけでなく、法務省なども巻き込む一大議論になる。




PLに対する内部留保金課税とは

1年間の利益のことを内部留保と呼ぶ場合は話が単純だ。

例えば、100億円の売り上げに対して費用が70億円ならば税引き前利益は30億円になる。

この30億円に税金20%(6億円)と仮定すれば差し引き24億円がPLでの内部留保だ。

この24億円(内部留保)に対してさらに課税するのであれば、法人税の引き上げと同じ意味になる。

人件費を増加させた企業の法人税率を引き下げるなどの手法であれば新たな税金体系の創設になる。

現実には中小企業などを中心に機械などを購入した場合や従業員を増やした場合での税額控除は存在する。

上場企業を対象に人件費を増加させた企業に対して法人税を控除、もしくは人件費をケチる企業に増税という仕組みは物理的には可能だろう。

ただ、現実的には「ズルができない」ように、「今創設したことで過去に人件費を上げてきた企業が損をしない」ようになど考慮すべき事情は多い。

人件費の比重の大きい会社と小さい会社、海外にモノを売る会社と国内で稼ぐ会社、他の法律の縛り。

多くの利害関係を抱えて一朝一夕にはできないないだろうが、人件費を軸とした新たな税制の議論を続けていく価値はあるかもしれない。

PLでの留保金課税の亜種(あしゅ)

乃木坂46のメンバー、齋藤飛鳥さんは「あしゅ」と呼ばれている。

PLでの内部留保課税に対する亜種(あしゅ)には「特定同族会社の留保金課税」がある。

この制度は上場企業への内部留保の課税とは議論が異なる。

株式会社の株式を社長だけが持っているようなオーナー企業の場合、会社のお金を相当にコントロールできる。

法人税を払いたくないために単年度の利益をあえてゼロ(PLでの内部留保をゼロ)にするため、予定のなかった現地調査や現地調査や現地調査をする行動が可能になる。

他にも、オーナー企業には多くの節税対策があり、上場企業ではなく非上場企業が強い力を持っていた20世紀には大きな議論になっていた。

この辺りの議論を詳しく知りたい人は西武ライオンズのオーナーで世界一の大富豪とも呼ばれた堤義明氏の節税対策などを検索してみたらどうだろうか。

BSに対する内部留保金課税とは

議論が紛糾するのがBSの内部留保に対する課税だ。

財務省の法人企業統計によると全産業での2016年3月末のBSでの内部留保は377兆円、そのうち資本金10億円以上の企業で182兆円を占める。

政治的思想を持ったメディアがよく「大企業が内部留保を溜め込んでいる」と批判する根拠の一つだ。

昨今ではこのメディア批判への批判も世間に広がっている。

「内部留保は現金とイコールではない」
「内部留保と設備投資の金額に関連性はない」
「従業員に高賃金を払い、設備投資をして利益を稼いできたからこそ内部留保の金額が大きい」

どれも正論だ。

BSの内部留保に対する課税とは10年前や20年前に稼いだ利益に対して、今さらに課税するという意味になる。

過去の事情に対して、新たに課税する税法を創立するとなれば法の施行時以前に遡って適用する「法の不遡及」での問題にも直面するだろう。

また、一般的にBSにある内部留保以上の現金を持っている企業は少ない。

トヨタであれば、2017年3月期末の内部留保17兆6010億円に対して現金は2兆9950億円しかない。

これは2017年3月31日の瞬間に持っていた現金であり、その後にくる部品仕入れ、賃金、税金の支払いに備えた現金た。

全てが自由に使える現金ではない。

BSにある内部留保(過去の利益の累積)に課税するとなれば、土地や機械を売却しなければならない企業も出てくるだろう。

BSの内部留保に対する課税とは「10年前に稼いだ利益だけど、やっぱもっと税金とります」と言っているのだ。

ありとあらゆる方面から批判が飛んでくるだろう。




内部留保の所有者は株主

では、企業が蓄積してきた内部留保とは増える一方なのか、21世紀の世界の富は上場企業の懐に集まり続けるのだろうか。

単年度の利益(PLでの内部留保)に直接的に変化を加えられるのは政府(税金)だ。

一方、創業期からの利益の累積(BSでの内部留保)に文句を言えるのはその企業の株主だ。

上場企業の株式会社とは多くの株主が資金を拠出し、集まったお金を運営する人(経営者)を株主が選んでいる。

株主全員が揃って「やっぱ、俺たちが出したお金を返して」と言えば、代理人にすぎない経営者は株主にお金を返すのみだ。

会社の利益剰余金(BSでの内部留保)が減るのは「単年度の損益が赤字になった時」、「配当を出す時(株主にお金を返す)」、「自社株買いをする時(株主にお金を返すに類似)」だ。

企業の内部留保(利益剰余金)が無駄に大きすぎるというのであれば、その企業の所有者である株主が主張して配当を増やすようにすればよい。

昨今では外資系のアクティビスト(モノ言う株主)たちが主張して配当を増やす日本企業もあるうえ、金融庁が策定した機関投資家が守るべき行動規範(スチュワードシップ・コード)などの充実などで、BSの内部留保(利益剰余金)に対する活用方法の議論が進んでいる。

よくわかならかった人へ

内部留保の議論は複雑だろうか。

これまでの内容がよくわからなかった人は、以下の記事で新垣結衣さん(ガッキー)を比喩にして内部留保を学ぶことをおすすめする。





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1 Comment

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