「サウナでの熱い波が僕の冷え切った心を温めてくれる。僕はこの街が好きだ」
外苑前にある商社に勤める正広（28歳）。明治大学政治経済学部を卒業し、仕事にも慣れてきた社会人６年目。
25歳を赤羽で過ごした正広が次に選ぶ街とはどこか。そこにはどんな出会いが待っているのだろうか。
仕事に燃え、金と女に翻弄される28歳の男の人生を見つめてみたい。
◾️総合商社に入るも地味な仕事で転居を決意
僕は毎日仕事に明け暮れていた。
朝から晩まで僕は商いの男さ。
総合商社が手掛ける事業は本当に複雑なんだ。
大型プラントや航空機、自動車を担当する機械カンパニーでは海外出張が多い。
繊維カンパニーはファッションからハイテク資材に至るさまざまな分野で、人々の暮らしに新たな価値と感動を提供する。
鉱物資源を扱う金属カンパニーは、中国の経済減速による資源価格の低迷で大騒ぎになっているね。
僕が配属されたのは食料カンパニー。
海外で買収した事業、バナナやパイナップルを生産する青果物事業及びフルーツや野菜の加工食品を製造する加工食品を日本国内のスーパーなどに展開していく仕事だ。
僕は海外で働きたいと思って総合商社に入った。
でも、目の前の仕事は日本のスーパーに海外のパイナップルを売ることだ。
何が総合商社だ。何が豊かさを担う責任だ。
朝から晩までエクセルを叩き顧客と何十通のメールをして、夜には接待だ。
肉体的にも精神的にも限界がきた。
赤羽みたいな、ありふれた娯楽しかない街では生きていけない。
僕は決心し28歳で錦糸町に引っ越した。
◾️天然温泉。それは心と体の癒し
錦糸町に決めた理由は駅前にある天然温泉だ。
仕事に疲れた僕は週に２回は天然温泉で心を洗う。
中でも無料サウナイベント熱波浴「ロウリュ」は絶品だ。
サウナでの熱い波が僕の冷え切った心を温めてくれる。
サウナで体を温め、今度は水風呂に入ってイラついた僕の頭を冷やす。
錦糸町の温泉がなければ僕は会社を辞めたと思うな。
仕事帰りに温泉を楽しめば空腹が待っている。
錦糸町のラーメンと言えば「なりたけ」一択だ。
背脂ギタギタ系のこってりラーメンを食べれば上司の小言も世界から消え去る。
仕事、接待、温泉、ラーメン。
この４つが、今の僕にとって人生の全てだ。
◾️薄れていく大学時代の人間関係
（日本で10本の指に入る極上なラーメン「なりたけ」、公式サイトより）
大学の時に付き合っていた阿弥が今、何をしているかって？
僕も知らないんだ。フトした時に阿弥の大きな瞳を思い出すことはあるよ。
でも、大学時代の友達と連絡を取ることは少なくなってきた。
阿弥が今もベンチャー企業の部長と付き合っているのかは知らない。
ベンチャー企業の部長より総合商社の僕の方が上だと思っている。
総合商社は社内での飲み会も多い。
同期と歌って、踊って、裸になって。結婚式の余興では全裸で踊るのが僕らのしきたりだ。
日本最大の小売も世界でトップクラスの自動車も僕たち総合商社がいなければビジネスはできない。
僕たちが日本経済を動かしている。
僕たち総合商社こそが経済の全てであり、日本そのものなんだ。
◾️禁断の果実、社内恋愛
実は彼女ができたんだ。
会社で斜め前に座っている２年目の女の子、真那だ。
体が細ければ目も細い。大きな瞳の阿弥とは対極の存在かもしれないね。
大学時代の友人に真那の写真を見せると「目の大きさが阿弥の半分じゃん」って笑われた。
真那はとっても真面目なんだけど天然なところが魅力的だ。
僕が錦糸町に住んでいると言うと「何が禁止されているんですか？」って真面目に聞いてきたんだ。
真那とは錦糸町でデートを楽しんでいる。
錦糸公園、猿江公園と大きな公園があるんだ。
仕事柄、バナナやパイナップルに詳しい僕が極上の果物を持ってきて公園で一緒に食べる。
二人で米子会社の財務情報を笑いながら話し合えるのは同じ総合商社で働けるからこそ。
そうそう、真那は大食いだから「なりたけ」を一緒に食べられるんだ。
僕も28歳。真那とは今後も一緒に生きていこうと思っている。
阿弥との別れも今の僕にとっては糧になっている。
錦糸町に骨を埋め、キツイけれどこの総合商社で一生働いていこうと思っているよ。
◾️次回予告
赤羽から錦糸町に生活の拠点を移した正広（28歳）。
仕事時間は長いながらも、プライベートを上手く活用し輝いている。
だが、そんな正広に暗雲が立ち込める。
一般の社会人の人生を左右することがないはずの「会計基準」
日本の会計基準ではなく、国際的な会計基準である「IFRS」が正広の人生の転機となる。
初度適用とは？会計基準の変更時の減損会計の処理とは？
３年後、31歳の正広は人生の荒波にどうやって立ち向かっていくのか。
不定期で連載は続く。
〜〜免責・注意事項〜〜
ワイの人生と勘違いしている人はいないよな。
kaikeiさん！
ありがたやぁ～（涙）
おーう