新説、邪馬台国論争 魏志倭人伝の罠





邪馬台国はどこに? 無意味な論争に踊らされるな

邪馬台国の所在地を巡る「畿内説」vs「九州説」の論争が長年続いている。

しかし、この論争自体が無意味だという新説が広がっている。

邪馬台国がどこにあったかなど、問題ではない。

魏志倭人伝が書かれた目的は倭国の正確な地理情報を伝えるためではなく、中国の政治的思惑を反映したプロパガンダ(宣伝)だからだ。

魏志倭人伝は地理書ではなく、当時の政治的プロパガンダ

『魏志倭人伝』は3世紀の中国・魏王朝によって書かれた公式歴史書『三国志』の一部だ。

しかし、ここで重要なのは、これが単なる歴史記録ではなく、魏の政治的戦略の一環として作成されたものだということだ。

陳寿が書いたこの書物は、魏の権威を誇示し、周辺諸国との外交関係を整えるためのものだった。

つまり、倭国の実態を客観的に伝えるつもりなど毛頭なく、都合よく脚色された情報なのだ。

魏志倭人伝によれば、邪馬台国は帯方郡(朝鮮半島)から「万二千余里(約6000キロメートル)」離れた地にあるとされる。

しかし、実際に日本列島までの距離はせいぜい1000~1200キロ。

こんな大嘘を信じて邪馬台国の位置を測ろうとするのは、砂上の楼閣を築くようなものだ。

クシャーナ朝とのバランス調整──邪馬台国の「架空の役割」

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では、なぜ魏は邪馬台国をこんなに誇張して描いたのか? その答えは、当時の魏の外交戦略にある。

3世紀、魏は西方の強国「クシャーナ朝(大月氏国)」と関係を持っていた。

このクシャーナ朝は、中国から見て西方の大国であり、魏に朝貢することで「魏の威光」を際立たせる存在だった。

そこで、魏は東方にも「クシャーナ朝に匹敵する格の高い国」があることを示す必要があった。

その役割を担ったのが、邪馬台国だ。

つまり、魏志倭人伝は、邪馬台国を「東方の大国」として意図的に作り上げ、クシャーナ朝とのバランスを取ったのだ。

この結果、本当はそこまで大きくもない倭国が、クシャーナ朝に並ぶ大国のように描かれることになった。

魏が欲しかったのは「東西のバランスの取れた世界観」だ。

曹真と司馬懿の権力闘争が作り出した邪馬台国

ここで見逃せないのが、魏の軍事と外交を主導した曹真と司馬懿の権力闘争である。

曹真は曹氏の一族として正統性を象徴し、曹丕や曹叡から厚い信頼を受けた。

一方、司馬懿は新興勢力として台頭し、曹氏の後継者争いの中で力を増していた。

・曹真は西方戦略の要として、クシャーナ朝との外交を主導し、「親魏大月氏王」の称号を授けた。

・司馬懿は東方戦略の要として、倭国との外交を担当し、卑弥呼に「親魏倭王」の称号を授けた。

陳寿は、この二人を並べるために、後世になって倭国を誇張し、クシャーナ朝と対等な国として描いたのではないか。

魏の宮廷内では、曹真と司馬懿の間で激しい権力争いが繰り広げられていた。

曹真がクシャーナ朝を朝貢国とすることで功績を挙げた一方、司馬懿も東方の倭国を魏の影響下に組み込もうとした。

陳寿が『三国志』を編纂したのは西晋の時代であり、その頃には司馬懿の一族が魏を乗っ取っていた。

したがって、司馬懿の功績を曹真と並べるために、魏志倭人伝で倭国の規模を誇張し、クシャーナ朝と対等に扱った可能性がある。

邪馬台国論争は「プロパガンダの罠」

以上の事実を踏まえれば、邪馬台国が畿内か九州かを延々と議論することが、どれほど無意味かが分かるはずだ。

魏志倭人伝の記述自体が「魏のプロパガンダ」であり、地理的な正確性は二の次だったのだから、そこに答えを求めること自体がナンセンス。

畿内説派も九州説派も、魏の政治的な意図を見抜かずに無駄な争いをしている。

邪馬台国の正体を知りたいなら、魏志倭人伝の記述を盲信するのではなく、当時の中国の外交戦略や地政学的な背景を読み解くべきだろう。

歴史は、意図されたストーリー

邪馬台国論争は無意味な議論だったのか?

邪馬台国の所在地を求めるのではなく、なぜ魏がこの国を「東方の大国」に仕立てたのかを理解することこそが本当の歴史の解明だ。

歴史とは、勝者が作る「物語」であり、その裏にある権力の意図を見抜くことこそが必要だろう。

参考文献・出典

『魏志倭人伝の謎を解く 三国志から見る邪馬台国』渡邉義浩(中公新書、2012)
​朝雲新聞社「魏志倭人伝を考える」(2022年10月6日)
『三国志』魏書東夷伝倭人条(陳寿)




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