こんにちは!
経済誌「キュレーションドットコム」です。
日本の電機大手だったシャープを台湾の鴻海が買収する報道が混乱しています。
結論から述べると、シャープが鴻海に示したとされる潜在的債務について「偶発債務」と表記しているメディアは訂正しなくてよいのかな?
シャープと鴻海の騒動で「偶発債務」と書いたメディアの覚悟は凄いですね!
・シャープと鴻海って揉めてますね?
シャープは25日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業による買収提案を受け入れると発表した。
総額6600億円もの出資により、鴻海グループがシャープの議決権の66%を保有する親会社になる。
昨年から報道で広まっていた鴻海と産業革新機構によるシャープ再生を担う主体が、鴻海に決定にしたかに見えた。
ただ、事態はすぐに一転する。
鴻海は25日の夕方に「シャープが24日に提出した文書に精査しなければならない内容がある」と発表、買収の契約を延期すると発表した。
鴻海が出資を直前でためらうほどの内容とは何なのか。
シャープが鴻海に提出した資料の内容について報道が錯綜した。
・シャープは偶発債務を隠していたんだって!?なんて日だ!
大手メディアはシャープが鴻海に提出した資料で、シャープが潜在的に抱えている債務について「偶発債務」と表現している。
ここで偶発債務の定義について考えてみたい。
偶発債務とは企業会計上、現実にはまだ発生していないが将来一定の条件が成立した場合に発生する債務のことをいう。
偶発債務という名前が示すように、企業が必ず払わなければいけない債務ではない。
例えば強引に訴訟を起こされて100億円の賠償を要求されたとしよう。
一般的に見れば100億円の要求などあり得ず、百歩譲っても1億円を賠償すれば良いようなケースだ。
この場合、企業が100億円を要求する訴訟を起こされているのは事実だ。
この時、財務諸表等規則や会社計算規則により企業はこの訴訟について注記することが求められている。
「100億円の賠償請求はされている。ただし、この賠償請求は無理筋ですよ」
企業にはこのような開示が求められている。
これは投資家にとって企業が抱えているリスクを開示させる目的がある。
・むむ!?何を言ってるんだ?何を言いたいんだ?偶発債務マン?
企業が偶発債務の注記を怠った場合、有価証券報告書の虚偽記載となり金融商品取引法に違反する犯罪で懲役刑まで課される。
会計上の偶発債務を隠していたとすればどうなるか。
シャープが鴻海に提出した資料について、今まで明らかにしなかった偶発債務があるならばシャープは粉飾をしていたことになる。
はたして、シャープは鴻海からの買収を受けて今までの粉飾を明らかにしたのだろうか?
シャープは26日、一連の報道について「当社の潜在的債務(報道では偶発債務)が 3,000 億円規模とされておりますが、これは当社の発表に基づくものではありません」と発表した。
このプレスリリースには「偶発債務については、会計基準に基づき、有価証券報告書、四半 期報告書等で適切に開示しており、その他に開示が必要と認識しているものはありません」と明記している。
シャープは会計上の偶発債務を鴻海に提出したのではなく、広い意味での潜在的なリスクを鴻海と協議していると発表している。
・つまり、どういうことだってばよ?
シャープが鴻海に提出した資料を「偶発債務」と表現した場合、「シャープは粉飾していた」と伝えていることになる。
もちろん、報道各社が深い取材の上にシャープの粉飾の可能性を指摘しているならば問題はない。
偶発債務の意味を理解した上で報道しているならば何も問題はない。
有価証券報告書に記載が必要な「偶発債務」と、買収の交渉においての潜在的な債務は意味が大きく異なる。
シャープは会計上の偶発債務を鴻海に提供したわけではないと発表している。
私がシャープに巨額の資産を投じているか、シャープの広報であるならばどちらの意味でも憤慨しているだろう。
報道各社が偶発債務の意味を理解し、投資家たちに正確な情報を伝えていることを祈るばかりである。