企業は自己株を全て取得、消却できるのか 行き着く先は株式会社の国営化?


企業は自己株を全て取得、消却できるのか

こんにちは。

経済誌キュレーションドットコムです。

10月8日早朝の本誌記事「自己株式の消却とは『朝三暮四』 意味はなくとも人動く、アイドルの笑顔のように」で質問が寄せられました。

「自己株を全部消却した場合、株式会社は株式会社じゃなくなるのか?」

良い質問ですね。

企業は全ての自己株を取得し、消却できるのか。考えてみましょう。
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企業には自己株式取得に財務制限がかかり、全ての自己株式は取得できない

企業には会社法上、自己株式取得に一定の制限がかかっています。

過去において企業には自己株式を取得すること自体が原則禁止されていましたが、平成13年の会社法改正により自己株式の取得・保有は原則自由となりました。

株主還元やM&Aなど機動的な自己株式の利用が認められたのです。

ただし、企業による自己株式の取得は出資の払い戻しと同義であり、株主間の不平等や債権者保護の観点から問題は残ります。

そのため自己株式取得の財源は、剰余金の分配可能額の範囲内となっています。

分配可能額とは簡単に言えば今まで稼いだ利益の蓄積の一部であり、資本金に該当するお金は会社に残さなければいけません。



させてくれぇ〜、会社が全ての自己株式を取得させてくれぇ〜

全部取得条項付株式や企業の清算、合併などの場合では瞬間的に企業が全ての自己株式を取得するケースも考えられますが、それらは一時的なものなので本論では考慮しません。

なんとか企業が全ての自己株式を取得する方法はないでしょうか。

資本金が1万円で株主が1人の株式会社Aを想定してみましょう。

株式会社Aの株主が突然、亡くなったとします。

この株主は天涯孤独の身で財産を相続する人がいません。

株主不在の株式会社(法人)は困ってしまいますね。

株式会社Aに債務(借金など)があれば、株式会社Aに対する債権者(お金を貸している人)が実質的に会社の所有者になりそうです。

株式会社Aが借金だらけであれば検察官が家庭裁判所に申し立てて相続財産管理人を選定、債権者たちで株式会社Aの財産の分配をして会社清算となるでしょう。

株式会社Aにまったく借金がない優良な会社であればどうなるか?

この場合は株式会社Aの財産は国庫に帰属するのが原則とされています。

つまり、株式会社Aは国有化されるのです。

これはただの思考実験でした

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会社が自己株式を全て取得し、消却することは現実的にはあり得ない、が答えとなります。

自己株式の取得とは余裕のある企業に許された風雅な出資の払い戻し。

企業が自己株式の取得を発表した際には、

「ああ、こいつは金に余裕があるんだな(他に金の使い道がねーんだな)」

と思うのが無難でしょう。




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