セブン&アイが2017年2月期の純利益の見通しを大幅引き下げ
こんにちは、経済誌キュレーションドットコムです。
日本を代表するコンビニのセブンイレブンなどを展開するセブン&アイ・ホールディングスが9月30日に2017年2月期の純利益の見通しを大幅に引き下げました。
セブンイレブンを気軽に利用する女子高生にとってもビックリしてこう思いますよね。
「セブンイレブンって儲かってるんじゃないの?」
セブン&アイ・ホールディングスはなぜ純利益の見通しを従来の7%増から一転して50%減にしたのか。
女子高生でもわかるセブン&アイ・ホールディングスの2017年2月期の業績見通しを見ていきましょう。
たった2ヶ月でモノが売れなくなる?
セブン&アイは9月30日に、2017年2月期の純利益の見通しを前期比7%増の1720億円から50%減の800億円に引き下げました。
会社は最初に「今年は1720億円は儲かる」と言っていたのに、「やっぱり800億円しか儲からない」と宣言したのです。
差額の920億円は見込み違いなのでしょうか。
以前の予想は8月2日に発表したものです。
それからたった2ヶ月でモノが急激に売れなくなったのでしょうか?
セブン&アイのグループにはコンビニとスーパー、百貨店がある
セブン&アイのグループにはセブンイレブンと総合スーパーの「イトーヨーカ堂」、百貨店の「そごう・西武」などがあります。
コンビニは好調なのですが、イトーヨーカ堂とそごう西武では苦戦が続いていました。
ここで大きく会社を変えようとするためにお金がかかるようなのです。
イトーヨーカ堂は2016年2月期は239億円の最終赤字と儲かっていませんでした。
赤字が続いていたため、大幅な改革をしようと会社は思っています。
まず、イトーヨーカ堂に現在ある商品はもっとお安くします。
(=2017年2月期下期の売価変更等の影響による売上そう利益110億円の低下の見込む販売計画を決定)
現在の在庫をとにかく売り切りたいのです。
消費者は嬉しいですが会社は儲からなくなってしまいますね。
でも、赤字傾向が続くイトーヨーカ堂を一気になんとかしようとしているのです。
また、イトーヨーカ堂の店舗にかけているお金も一気に費用にしてしまいます。
(店舗に係る減損損失150億円)
建物などに100億円を投資すれば本来は40年などの長い期間で費用にしていくのですが、当分は利益が出ないと割り切って一気に費用にします。
百貨店ではさらに「のれん」を減損します
百貨店のそごう・西武でも同様に、店舗にかけているお金を一気に費用にしてしまいます。
(店舗に係る減損損失122億円)
さらに「百貨店事業に係るのれんの減損損失」を334億円計上します。
セブン&アイが2017年2月期の純利益の見通しを大幅に引き下げたのは以下の3つが要因ですね。
会社名 | 内容 | 金額 |
イトーヨーカ堂 | 店舗に係る減損損失 | 150億円 |
そごう・西武 | 店舗に係る減損損失 | 122億円 |
会社全体(連結) | 百貨店事業に係るのれん減損損失 | 334億円 |
合計 | 606億円 |
ここで問題になるのが「百貨店事業に係るのれん減損損失」。
これは一体、なんなのでしょうか。
のれんとは何者?
セブン&アイの「のれん」は昔に百貨店を買った時のお金のこと
今回、セブン&アイが費用とした百貨店での「のれん減損334億円」は、むか〜しに使ったお金です。
セブン&アイは今から10年前の2006年6月、そごうと西武百貨店を買いました。
その時、そごうと西武百貨店はたくさんのお金を生み出すと思っていました。
セブン&アイは多めにお金を払ってそごうと西武百貨店を買い、その多めのお金を「のれん」として資産にしておきました。
のれんはお固く表現すると「超過収益力」。
わかりやすく言うと、お金を出す人が「この資産はたくさんお金を生んでくれそうだ!」ってめっちゃ思った分のお金です。
そのむっちゃお金を生み出そうと思ったお金「のれん」。
10年たった今、百貨店事業はどうもお金を生んでくれそうにないので、諦めて費用にするのです。
(注:ここでの説明については文末に女子高生向けでない補足を入れています)
なんで、セブン&アイは突然に思い切った決断をしたの?
セブン&アイは長らく鈴木敏文氏が会長を務めていました。
日本最強のコンビニ「セブンイレブン」を作った小売業界で伝説と呼ばれる人です。
2016年に色々あって鈴木敏文氏は会長職を退任しました。
2016年5月からはセブンイレブンで働いてきた井阪隆一氏がセブン&アイのグループ全体の社長になったのです。
社長に就任した井阪氏は「100日を目安に重点課題を洗い出す」と話しました。
9月にはその100日が過ぎました。
2017年2月期の業績見通しの下方修正の意図は何なのか。
それは、今まで儲からなかった総合スーパーと百貨店を大きく変えようという新社長の意気込みなのかもしれませんね。
注:女子高生向けでない補足
セブン&アイは2006年にミレニアムリテイリング(そごうと西武百貨店の親会社)を株式交換で完全子会社化しています。
現金買収をしたわけではないので上記の「のれん」の説明はあくまで比喩です。
現状の結果を見ると2006年当時のセブン&アイとミレニアムリテイリングの株式交換の比率の算定を間違えたように見えます。
もちろん、10年先を正確に見通すのは無理です。
ミレニアムリテイリングの大株主だった野村プリンシパル・ファイナンスとの交渉の問題だったのかを検証するのは難しそうです。
また、のれんは10年前から定期償却しているため、今回の減損の金額は当時に計上したのれん全額ではありません。
なお、2017年2月期はコンビニ事業の営業収益の見通しを大幅に引き下げていますが、これは原油安と円高の影響です。
アメリカのセブンイレブンではガソリン販売を行っています。
セブン&アイの決算では米国セブンイレブンが為替と原油価格で大きく営業収益が上下するのには気を付けたいですね。