好きな馬がいること・第一話、広末涼子「先駆者たれ」


これは、一匹の馬と6人の美女の物語。

リンク・「月9ドラマと日本経済の関係:2016年のドラマ「好きな馬がいること」

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2016年の夏、音楽探偵の藤原馬也は悩んでいた。
「2016年の第一四半期の決算は円高の影響でみんなが大幅減益だ」。
2016年4〜6月期は前年同期と比較すれば対ドルで10円以上の円高
トヨタなど日本を代表する多くの企業が為替の変動で苦しんだ時期だ。
一方で日本電産やダイキンなど円高にも関わらず4〜6月期として過去最高益を稼ぐ企業もあった。
馬也は大きくため息をついて、手に持っていた缶ビールに口をつける。
「いったいどうなっているんだ。3ヶ月の業績でここまで企業の力の差が出るのも珍しいぜ」

音楽探偵として各企業にどんな音楽をあてがうか悩む馬也。
円高、円安、スマホの急拡大と伸び悩み、自動車や家電のハイテク化ーー。
そんな時代の変化にも負けない日本電産。
高価な墓石を建てるより安くても生きてる方が素晴らしいと言いたいような「負けない経営」。
「そうか…、日本電産は大事MANブラザーズの『負けないこと』か」。

・日本電産の例えで「負けないこと」は違和感がある
日本電産のように2016年4〜6月期で過去最高益を稼ぐ企業は稀で、トヨタのように2017年3月期通期の業績見通しの下方修正を発表する企業のほうが多い。
円高という逆境で利益を稼ぐ、異質の存在である今の日本電産の例えで「負けないこと」は違和感がある。

「ワイの腕も鈍ってきたな」。

馬也は小さく息を吐き、アサヒスーパードライを喉に流し込む。
どうも最近は音楽探偵の仕事が上手くいかない。
馬也にとっては頭痛が痛くて頭が重くて頭が混乱する日々が続いていた。
そんなある日、音楽探偵だけでは生活費がまかなえない馬也がパティシエとして働いていた菓子店が経営難で潰れてしまう。
「ワイが負けてるやないか」。




今まで働いていた湘南のレストランで呆然と立ち尽くす馬也。
そんな馬也の前に、ショートカットの美しい女性が突然に声をかける。
「先駆者たれ、じゃなかったの?」。
馬也は女性の声で衝撃を受け、目をまん丸に見開き呼吸が止まる。
井深大と共にソニー創業者の一人の盛田昭夫の名言「我が社はいつでも先駆者であります」
その言葉に憧れてきた馬也だが、バブル崩壊後のソニーはどうなっていたか。
セガサターンで「大戦略」や「サクラ大戦」に興じた魅力あるソニーの日々は夢幻に終わったのではないか。
馬也にとっての青春はもう終わりだ。
馬也の人生はソニーと共に沈んだのだ。
倒産した湘南のレストランで呆然としている馬也。
しかし、馬也の目の前に立って微笑んでいるのは、「せがた三四郎」などとソニーがほざいていた時代に日本で最高の美女と言われた広末涼子ではないか。

 

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馬也は錯乱する。
広末涼子が「先駆者たれ」という名言をワイに…?
馬也はディズニーシーで泥酔して終電を乗り過ごすようなほどの混乱をした。
動揺する馬也を前に、広末涼子は笑顔で語りかける。
「お兄さん、もう一度、頑張ってみましょうよ」。
そう笑う広末涼子につられて微笑まない男はいない。
馬也は何もわからずに、広末涼子が差し出す手を握った。
そう。
それが馬也にとって天国と地獄を同時に味わうような、奇跡の日々の始まりだった。








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