モマエら落ち着け、馬がVALUを分析


VALUで日本中が大興奮 モマエら落ち着け

個人が株式会社のように自分の価値を売買できるような新サービス「VALU」(バリュー)が注目を集めている。

株式会社VALUは2017年5月31日に新しいサービス「VALU」を開始した。

堀江貴文氏やはあちゅう氏などがさっそく新サービスを利用、著名ブロガーのイケダハヤト氏が「初動の3日で1,000万円分くらいのビットコインを手に入れました」と豪語している。

VALUに上場した個人、個人のVALU株を売買している人もサービスが開始したばかりのため大きな混乱が見られる。

どこかに問題点はないのか、経済誌キュレーションドットコムが検証する。

なお、VALUがどれだけ素晴らしいサービスかという点については世の中に記事が溢れているので当記事では触れない。

この記事の目次(2017年6月10日時点)

1、VALUとは
2、クラウドファンディングとの違い
3、人への投資ではない売買
4、価値をどうやって判断すべきか
5、株価形成での期待の概念
6、夢や目標を支援するシステムになるか
7、税金に注意

VALUとは、人を株式に見立てて市場で売買

VALUは個人が株式会社のような「VA(株式)」を発行し、じぶんの価値として好きな価格をつけて他の人と売り買いができるサービスだ。

サービスの開発者であり株式会社VALUの代表取締役の小川晃平氏はこう述べている。

金銭的な理由で諦めざるを得なかった夢や目標を、ファンから支援してもらい実現できたり、支援してくれたファンには見返りをプレゼントできたりするサービスとして、ビットコイン・ブロックチェーンの技術を用いてVALUを開発しました。

(Ready for:ビットコインで株式のように自分の価値を取引できる「VALU」

VALUとは新しい市場に上場する個人が他の投資家からビットコインを媒介にして資金を集め、その夢を実現するサービスだという。

株式会社に見立てれば、会社が上場して投資家から資金を集めて事業を拡大するのと同じだ。

クラウドファンディングと何が違う?

資金が足りない個人が夢や目標のため、不特定多数の人からお金を集めるシステムは既にクラウドファンディングという手法が広がっている。

一般にクラウドファンディングでは個人がやりたいことを明確にして、不特定多数の人から寄付や投資、権利の付与の形で資金を集める。

一方、現時点のVALUは上場した個人が何かをするかは曖昧なままで良い。

サービスが開始した直後のため、VALUで上場する個人も投資をする側も何の尺度もなしにVALU株を売買している状況だ。

クラウドファンディングとは違い明確なプロジェクトではなく、「人」自体に投資するのがVALUの特徴だろう。

VALU株の売買はその人の投資ではない

気をつけたいのは、既にVALUで上場した株を売買するのは上場した「その人」への投資ではないということだ。

例えば、上場している堀江貴文株(以降、ホリエモン株)を考えてみよう。

ホリエモン株を持っている一般人Aと一般人Bがホリエモン株を売買する。

ここでは一般人Aと一般人Bで資金(ビットコイン相当)のやり取りをしているだけで堀江貴文氏には何ら関係はない。

ホリエモン株の売買が活発になって価格が上昇しても堀江貴文氏には一銭も入ってこない(はず)。

株式市場と同じならば、VALUでも上場した売り出し時点でのタイミングでしか上場した主体に資金は入らない。

実際の株式市場でも勘違いする人は多いが、会社(VALUでは個人)から見て自分の株の「市場に売り出す時点での売買」と「市場での売買」の性格は全く異なる。

VALUで上場した個人が売り出し時点以降、さらに資金を得ようとするならば増資をする必要がある(はず)。

この増資をどう捉えるかは株式会社VALU、上場している個人、売買している投資家で現時点で理解に違いがありそうだ。

増資については気が向いたら別途、記事にする。

なお、VALUはサービス開始で間もないため現状の仕組みを大きく変える可能性がある。

VALUの価値をどうやって判断すべきか、理論的には優待で判断

企業であれば純資産(BS=貸借対照表)、利益(PL=損益計算書)などが株価の判断材料の一つになる。

VALUはその人への投資という曖昧なものであるため価値を判断しにくい。

では、VALUでの個人の株の価値は夢や目標、ブランドという曖昧なものしかないのか。

現在のVALUの仕組み上では「優待」がVALU株の理論的な価値になりそうだ。

VALUでは個人の株を買ったVALUER(株主)に優待が設定できる。

株式会社であれば配当金や自社サービスを提供する株主優待に当たる。

例えば、AKB48のアイドルであるまゆゆ(渡辺麻友)がVALUに上場すると仮定しよう。

まゆゆがVALUでの株主には年に1回、7秒だけの握手をする優待を設定する。

2017年のリアルの世界では、まゆゆと7秒で握手できる権利は握手券(CD)を購入することで1000円程度で可能だ。

つまり、VALUでまゆゆ株を買っても握手券(CD)を買っても価値は同じになる。

この場合、VALUでのまゆゆ株の理論価格は1000円相当だ。

(話がややこしくなるので将来キャッシュフローの割引計算は考慮しない)

優待だけでは決まらない、株価形成での期待の概念

VALUでは優待が株価の尺度の重要な一つになる。

実際にはサービスが開始したばかりのためVALU上で優待を設定していない個人も多いだろう。

また、株式市場と同様に考えるならば株価は実績よりも期待の方が優先度が高い。

例えば、2つの企業を比較してみよう。

企業A:2017年3月期に純利益5000億円だが、市場縮小で2018年3月期の純利益が500億円の見通し

企業B:2017年3月期に最終赤字5000億円、今後は市場拡大で2018年3月期の純利益が1000億円の見通し

企業Aが2年間で稼ぐ利益は5500億円、企業Bが2年間で稼ぐ利益は4000億円の赤字だ。

2年間で稼ぐ利益に関係なく、この場合は企業Bの株価の方が高くなる可能性が高い。

株価とは今後の期待や未来への変化率などが吟味されて決定するからだ。

では、VALUで個人の株価の価値をどう判断するか?

実際の優待だけでなく今後の優待への期待も価値判断の一つになるだろう。

また、VALUで自分の株価の価値が上がったのを見た個人が、優待を当初の握手一回ではなく30分のトークに変更するなどより良いモノに変える場合も出てくるかもしれない。

VALUは夢や目標を支援するシステムになるのか

株式会社VALUの代表取締役の小川晃平氏はVALUは人の夢や目標を他の人が支援するサービスだと述べている。

ただ、株式市場に似せた現時点の仕組みであればVALUは優待を一つのサービスとみなしてその権利を獲得するための市場になりそうだ。

もちろん、現時点では新サービスへの溢れる期待を背景にした資金が集まっている。

株式会社VALUもサービスをローンチしてから投機的な市場にならないために四苦八苦しているようにも見える。

VALUは人の夢や目標を支援するサービスになる可能性があり、優待の価格を決定する機能を持つサービスになる可能性があり、人の名前を媒介にした賭博場になる可能性もある。

税金に注意、儲けた場合は所得税に該当か

念のために申し添えますが、VALU株の売買でビットコインを介して現金を儲けた場合、個人では所得税の課税対象になる可能性がある。

仮想通貨での税金については明確に整理されていないものの、ビットコインの取引所であるビットフライヤーのホームページでは以下の記述がある。

ビットコイン(仮想通貨)の売買その他の取引から生じる収益は、本邦所得税法及び法人税法上の所得に該当すると考えられ、所得税及び法人税の課税対象になると考えられます。

VALUで実際に儲けるとすればこういう経路になる。

現金→ビットコイン→VALU→ビットコイン→現金

VALU株の売買で得た利益は取引頻度やその人の立場により、事業所得か雑所得、譲渡所得に該当する可能性が高い。

税金がかかるのはVALU株の売買で利益が出てビットコインに変え、それを現金に変えてもなお利益が出た時点になるだろう。

また、VALUに上場する個人が優待を現金やそれに類するサービスにした場合、株式と似たような性格を持つため株式と同様の規定を受ける可能性もある。

インターネットで大きな話題になっているVALUという新サービスが大きな可能性を秘めているのは間違いない。

ただ、大きなリターンには大きなリスクも同様に潜んでいることは自覚するべきだろう。

・画像:フリー写真素材「ぱくたそ」より河村友歌(ゆかちぃ)




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