2016年1月29日、日銀の金融政策決定会合にてマイナス金利マンは誕生した。
彼は日本国内の金利を低下させ円高を食い止める使命を持つ。
また、銀行が日銀に無意味に預金(ブタ積み)しているお金を世の中にばら撒く責務もある。
日本に長く続いたデフレを脱却させマイルドなインフレにより経済の好循環を生もうとするマイナス金利マン。
これはそんな男の戦いの物語である。
◾️のっけから大ボス、三菱UFJ!
ドラゴンクエストであればスライムやスライムベスと戦う序盤。
生まれてから一週間も経過しないマイナス金利マンに竜王クラスの敵が現れる。
MUFJマン「マイナス金利マン!待っていたよ」
マイナス金利マン「日本の金融界の大ボスMUFJマンじゃないですか。さっそく企業への貸し出し拡大に協力してくれるんですか?これは心強いです!」
笑顔のマイナス金利マンに対して、MUFJマンは2月3日付の日本経済新聞朝刊を差し出す。
〜〜三菱UFJが普通預金に企業から手数料、預金増加を抑えたい〜〜
マイナス金利マン「そんな!預金を抑えて信用収縮の道に進むのですか?貴方がマイナス金利を嫌がり、日銀への預金から企業への貸し付けに資金を回してくれると思ったのに…」
MUFJマン「ごめんね。とっくに日本は超低金利の世界なんだ。個人や法人の預金口座を維持するだけでもコストがかかる。マイナス金利マンの誕生をきっかけに、普通預金に手数料を付けるのを検討させてもらうよ」
マイナス金利マン「で、でも!それでもMUFJマンはデフレを食い止め日本経済を活性化するためにこれから余剰資金を企業に貸していきますよね?」
三菱UFJマン「それでも、守りたい世界があるんだ!(自分の利益)」
マイナス金利マンの登場により銀行は手元に溢れる資金の使い道を考えなければいけなくなった。
しかし国内の大企業は借入金の返済しか頭にないため、銀行はお金を貸す相手がいない。
金を借りて投資の拡大を叫ぶ日本企業のトップなど米スプリントでシステムをいじっているハゲのオッチャンしかいなそうだ。
マイナス金利マンはただうなだれるばかりだった。
◾️救世主現る
???「マイナス金利マン、君を待っていたよ!」
マイナス金利マン「き、君は!?」
不動産マン「僕たちは君を心から歓迎する」
マイナス金利マン「不動産マン!業態的に負債が大きいため、マイナス金利適用による社会全体の金利低下で支払利息が減少して採算が改善しそうだ!しかも、銀行からの余剰資金が不動産市況に流れ込む可能性もある!」
不動産マン「そうさ!長期金利が低下すれば一般ぴーぽーが使う住宅ローンの金利も当然に低下する。多くの人がローンを組んで僕を買ってくれるぞ。一緒にデフレ脱却に頑張ろう!」
マイナス金利マン「ありがとう!僕は負けない!」
マイナス金利マンと不動産マンはガッチリと握手を組み、笑顔でその場を去った。
◾️悪の親玉現る
???「おとうさんおとうさん きこえないの まおうがなにかいうよ」
マイナス金利マン「だ、誰だ!?」
ブタ積みマン「我こそはブタ積みマンだ」
マイナス金利マン「ついに現れたな、僕が倒すべき敵!金融機関が法律上必要な日銀に預けるお金以上に溜まっている資金!240兆円とも言われるブタ積みマンを市場に流し込めば僕の勝ちだ!」
ブタ積みマン「クックック…。なんと浅はかな主人公なことよ…。まあよい、かかってくるが良い」
違和感があるほどに余裕を見せるブタ積みマン。しかし、マイナス金利マンは宿命の敵を前にして止まらない。
マイナス金利マン「2月16日から付与するマイナス0.1%の金利について当初は約10兆円と試算!」
マイナス金利マン「2%の物価目標の実現への姿勢はいささかの揺るぎもない!」
マイナス金利マン「追加緩和の手段に限りはない!」
マイナス金利マン「マイナス金利・流星拳!」
マイナス金利マンの必殺技がブタ積みマンに炸裂する。
ブタ積みマン「見事だ…」
音を立てて倒れるブタ積みマン。
勝利の喜びで天に向かって大きな声で叫ぶマイナス金利マンに小さな断末魔が聞こえた。
ブタ積みマン「果たして、私が本当に敵だったのかね…」
◾️勝利とは
マイナス金利マンはその言葉に寒気を感じ、手元のスマートフォンで「ブタ積み」とググる。
マイナス金利マン「な、何だって…っ!」
トップページに出てくるのは投資家向けサイト「稀に役立つ豆知識」による「ブタ積み理論は正しいのか?」という記事。
その他にもヤフー知恵袋などでブタ積み理論の批判がされている。
マイナス金利マン「そんな…。いわゆるブタ積みの金額と銀行の企業への貸し出しが活発になっているかの相関が単純にわからないなんて…。僕は、いったい何と戦っていけばいいんだ…」
マイナス金利マンは両膝を落とし、号泣した。
◾️本当の敵とは
そんなマイナス金利マンを見て笑う3つの影があった。
効果は限定的マン「ブタ積みマンがやられたようだな」
流動性の罠「ククッ、奴は我ら四天王の中でも理論が最弱…」
長年のデフレマインド「日銀の心意気ごときに負けるとは我々の積み重ねてきた年月の恥さらしよ」
はたして、マイナス金利マンは日本経済を活性化するのか?
全ては謎に包まれている。