馬が分析、文春vs東洋経済


週刊文春と東洋経済オンラインの2大メディアが激突

大手メディア同士が火花を散らして戦っている。

週刊文春は2017年8月9日発売の夏の特大号で以下の記事を掲載した。

「東洋経済オンライン」衝撃の内部告発 「2億PVの実態は下ネタ中心で社内の士気は低下」

名指しされた東洋経済オンラインも同日、『「週刊文春」8月9日発売号掲載記事について』との記事で反論した。

いったいどちらが正しいのか。

最も自由な経済誌を標榜するキュレーションドットコムが週刊文春の記事と東洋経済オンラインの反論を分析する。

目次

東洋経済、文春砲に反論
2億PVの実態は下ネタ中心
ノルマ争いに辟易する社員
大手メディアのプロレスか

東洋経済オンライン、文春の記事に対して反論


週刊文春の記事に対して東洋経済オンラインはこう述べている。

当該記事は、あたかも多数の「内部告発者」がいるかのように装っていますが、事実と異なる創作された内容にあふれています。
そのすべてをここで指摘することはしませんが、東洋経済新報社および筆者陣の名誉を傷つけるような内容を看過することは到底できませんので、あえて、とくに悪質と思われる記述について以下のようにご説明します。

では、文春の記事を熟読したうえで東洋経済の反論を一つずつ検証していこう。

反論1「2億PVの実態は下ネタ中心」は違う


・文春、記事のサブタイトル
「2億PVの実態は下ネタ中心」

・文春の記事内

「PVを獲得するために貧困、風俗、セックス、婚活など、経済とかけ離れた記事を数多く配信している」(東洋経済新報の中堅社員)
「下ネタ記事、貧困ネタの記事のオンパレードなのです」(同上)

・東洋経済オンラインの反論

幅広いテーマの記事の中には、病気や失業の末に風俗で働かざるを得なくなった女性のルポルタージュも含まれています。
われわれは、こうした記事を「下ネタ」と考えたことはありません。

最初から大きなボタンの掛け違いが起きている。

文春は見出しのサブタイトルこそ「下ネタ中心」と書いているものの、記事内では「下ネタ」を「貧困・ライフネタ・AV」と区別している。

文春は記事内で若手編集者の声としても「貧困を風俗と結びつけることでヒット記事に仕立て上げる手法をよく使う」と説明している。

つまり東洋経済オンラインの反論と同様に、文春も「風俗で働かざるを得なくなった女性の記事」を「下ネタ」と同一には考えていない。

文春に問題があるとすれば見出しのサブタイトルが扇動的という点だろう。

なお、東洋経済オンラインは反論の根拠として2017年7月のアクセス上位記事の一覧(1〜20位)をサイトに掲載した。

1〜5位のリンクは以下だ。

これらの順位について、供給側の編集と需要側の読者にどんな構造を見るかは人によるだろう。

1位:外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」
2位:外国人が心底失望する「日本のホテル事情」
3位:男はみんな「元カノの成分」でできている
4位:海老蔵さんへの「心無い中傷」、止めませんか
5位:超高学歴25歳女性が生活保護に頼る深刻事情

反論2「ノルマ争いに辟易する社員」は違う

・文春の記事内

「営業マンのノルマ争いをさせられているような空気に辟易している記者も少なくありません」(東洋経済新報の中堅社員)

・東洋経済オンラインの反論

東洋経済は社員の自主性を重んじる会社でありノルマを課すようなことはありません

両社とも経験値のある大手メディアだけに慎重な言い回しだ。

文春は独自の取材により東洋経済の社員はノルマ争いに辟易していると書いた。

一方、東洋経済オンラインは社員にノルマは課していないと断言している。

ここには2つの構造が存在する。

A:明確にPVを稼ぐノルマがなくても、PV至上主義の空気が会社に形成される

B:ノルマがないために「PVは多い方が良いが骨太の記事が大事」という社風が存在する

AとBのどちらを否定することもできない状況であり、この点で両社は平行線だろう。

なお、文春は記事内で2012年に東洋経済オンラインの編集長に就任した佐々木紀彦氏が「外部筆者による下ネタなどの世俗ネタを採用し、PVを稼ぐ方針をとっていた」という当時のスタッフの声を掲載した。

2社の戦いは真剣かプロレスか

週刊文春と東洋経済オンラインはそのほかにも「記事の誤りvs追記」「10億PVの号令の有無」「東洋経済オンラインの読者モデルは自社申告の数字か外部委託のアンケートか」について激論を交わしている。

これらの詳細については東洋経済オンラインと週刊文春の本記事に譲りたい。

2社は激しく争っているように見えるが、注意深く見ると互いに慎重な指摘と反論をしている。

文春の東洋経済オンラインへの記事の4/4ページ目の大部分は批判しているまさにその相手である東洋経済オンラインの山田俊浩編集長のインタビューだ。

東洋経済オンラインが「あの編集長へのインタビューは嘘」と明言していない以上、文春記事内の山田編集長の発言に嘘はないのだろう。

批判されている側の編集長のコメントが文春の記事内にふんだんに盛り込まれているのだ。

いったいどういうことか。

「大手メディア2社の真っ向からの喧嘩」という流れで東洋経済オンラインのPVを稼ぎ、週刊文春も販売部数を伸ばそうとしている可能性さえある。

実際に、キュレーションドットコム編集部は8月9日に東洋経済オンラインのページを踏みまくり週刊文春を買ってしまった。

これは大手メディアによる新しいプロレスなのかもしれない。





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