株主総会、現行法で延期できる継続会とは 配当の基準日は変えずに決算の承認の総会を後日に開催
新型コロナウイルスの感染拡大で日本企業の経理部門が混乱している。
多くの日本企業の決算日は3月末のため、決算を確定する作業は4〜5月に集中。
上場企業などではその決算をチェックする監査法人の業務も同期間が中心となる。
従業員の安全を最優先する経営者はリモートワークを中心にして安全を確保したいものの、目先の決算作業が問題となっていた。
問題解決に向けて金融庁や経団連などでつくる協議会は4月15日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を公表した。
3月期決算企業でも法令上は6月末より後ろの日程で定時株主総会を開催できることを周知徹底。
いわゆるBSやPLなどの計算書類や監査報告は、株主総会をさらに後に開催する「継続会」で承認する方法の利用も促した。
株主総会の延期は現行法でも可能となっている。
ただ、株主が配当を受け取る権利確定日(基準日)を3月末から後ろにずらすことには投資家からの反発も予想されるため、経営陣も及び腰になっていた。
そこで、配当金の権利確定日は3月末と従来から変えずに、決算の承認だけを後の日程にずらす株主総会の「継続会」に脚光が当たる。
会社法317条によると株主総会は、延期または続行することができる。
株主総会の開催自体は成立するも、議案の決議を別の日にすることを「延会」、一部の決議を後回しにして総会を開催することを「継続会」と一般的に呼ぶ(会社法上の用語ではない)。
今回のコロナ騒動でいったん決算作業のスピードを緩めたい場合、この継続会の利用が投資家に配慮しつつ従業員の安全を守る一つの手段となる。
株主の権利確定日(基準日)は3月末のままで株式市場の混乱を抑え、2020年6月に予定通り株主総会を開催して配当などの議案を決議する。
そして決算承認の株主総会を約2~3カ月後となる2020年8〜9月に開催すれば、多くの関係者に配慮した形となる。
現在の会社法でも存在していた「継続会」だが、形式を重んじる日本の経営者が利用することは稀だった。
政府は声明により継続会の利用を促すことで、コロナ感染拡大を抑える一助とする。
また、経済産業省と法務省はコロナでの自粛要請を踏まえて2020年4月に「株主総会運営に係るQ&A」を公表。
コロナ感染拡大を抑えるために株主総会では株主に来場を控えるよう呼びかけ、会場の規模を縮小、入場制限も可能。
結果として「会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能」との考え方を示した。
株主が議決権を事前に書面投票するほかインターネットで行使することにより、実質的なオンライン総会が可能になっている。
なお、この継続会を利用する場合、会社法で配当に一定の制限をかける分配可能額に留意する必要はあるだろう。
・会社法317条より
(延期又は続行の決議)
第三百十七条 株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第二百九十八条及び第二百九十九条の規定は、適用しない。
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