北朝鮮の実情、5人に1人がスマホ 金正恩氏は「意識高い系」で経済改革
北朝鮮とはいったいどんな国なのか。
日本語のメディアから出てくる情報は5年前や10年前の北朝鮮を指していることも多い。
2018年現在の北朝鮮は5人に1人がスマホを持ち、韓国文化が流行するとても社会主義には見えない国になっている。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は長期の留学経験から市場経済を一部で導入、現地から見れば「意識高い系」の指導者とも言えそうだ。
韓国など海外の北朝鮮の専門家が見る最新動向をまとめた。
記事内リンク
・スマホが普及
・韓国文化が流行
・金正恩氏の経済改革
・企業改革
5人に1人がスマホ、国内のイントラネットでオンラインショッピングやゲーム
(北朝鮮の小学校の運動会では親がスマートフォンで子供を撮影している。写真:北朝鮮の対外宣伝のサイト)
韓国政府系の統一研究院北朝鮮研究室のバク・ヨウンジャは4月4日、tbsラジオで北朝鮮の最新の実情を紹介した。
パク委員は北朝鮮の平壌の市場では「ロシア産のロブスター、韓国ブランドの炊飯器や化粧品、アクセサリーなどで溢れている」と指摘。
2014年からは北朝鮮が独自のスマートフォンのブランド「アリラン」と「平壌」の生産を開始して普及率が高くなったと話す。
ソウル新聞によると北朝鮮のスマートフォン普及は500万台で人口(2500万人)の5分の1まで伸びている。
もっとも北朝鮮では科学者や政府機関職員など一部のユーザー以外はインターネットの使用は認められていない。
多くの人々は北朝鮮国内限定のイントラネットでオンラインショッピングの「玉流」、ニュースの「朝鮮中央通信社」や「労働新聞」のほかゲームアプリを楽しんでいるようだ。
韓国文化が流行、社会主義には見えない国
北朝鮮ではSDカードを通じて韓国のドラマや音楽が流行している。
「朝鮮の資本主義共和国」の著者のダニエルチューダー氏はオンライン新聞プレシアンのインタビューに対して「韓国ドラマの影響で、北朝鮮の男性が女性に花束を与える『ロマンチック・ガイ』も誕生している」と話す。
ダニエルチューダー氏の見る平壌はアウディとメルセデスが走り、レストランやカフェの注文ではiPadが使われる「社会主義には見えない国」。
北朝鮮の大都市では「自分のアパートを時間単位でレンタルしてくれるおばさん」がいて、ラブホテルのように使われているという。
金正恩氏の経済改革、欧米流の「意識高い系」
なぜ北朝鮮の経済が拡大してきたのか。
多くの専門家があげるのが「金正恩の経済改革」だ。
2011年まで北朝鮮を指導した金正日氏は「先軍政治」を重視したが、金正恩氏は「核武装と市場開放に集中した」(ダニエルチューダー氏)。
国民大のアンドレイ・ランコフ教授は4月9日の毎日経済のコラムで「現代社会の流れを知らなかった金正日と異なり金正恩は長期留学経験もあり、外国語もできる」と指摘。
金正恩氏にはソ連式レーニン主義の影響も小さく、経済を拡大させている中国なども参考に「市場経済の強さをよく理解している」という。
海外の実情を知らない北朝鮮の人々から見れば、金正恩氏は欧米の経済事情に詳しく新しい手法で改革を進めようとする「意識高い系」とも言えるだろう。
企業改革、貧富の差は拡大
ランコフ教授は金正恩氏の経済政策を1980年代初めの鄧小平時代の中国の政策と似た点が非常に多いと分析する。
北朝鮮は2014年から「企業の責任管理制」を実施。
これまでは想像もできなかった自律性を企業経営者に提供、命令制の計画経済を部分的に解体して市場メカニズムに置き換えている。
ただ、成長しているように見える北朝鮮経済だが、急激な貧富の差の拡大からくる社会不安を指摘する声も多い。
核開発に対しての国際的な経済制裁による影響が北朝鮮社会に出てくるのもこれからになるだろう。
参考記事
ソウル新聞:“평양시장에서 쿠쿠밥솥, 한국화장품도 팔아”
プレシアン:평양의 ‘러브모텔’, 스키니진 입은 북한, 아시나요?
毎日経済:[글로벌포커스] 시장경제의 힘 활용하는 김정은